プログラム概要

◎計画概要

地球環境研究は大きな転換点を迎えています。国際的には、国際科学会議が国連環境計画、国連大学、国際社会科学協議会、ベルモントフォーラムと共同し、新たな研究イニシアティブ「Future Earth」(以下、FE)が立ち上げられた。FEは、これまで自然科学分野を中心に実施されてきた大気、海洋、陸地や地殻などの地球観測研究と、人文・社会科学分野による人間社会の政治、経済、文化等の研究を融合させ、持続可能な未来を築くための知見を得ることを目指しています。我が国でも日本学術会議を中心に拠点形成や研究課題の設定が模索されていますが、その取り組みはまだ始まったばかりであります。そうした中で、地球環境学堂は、本プログラムにより、FEに示される自然科学や社会科学の枠を越えた統合的・学際的な研究の必要性に対応しつつ、欧米等先進諸国との国際共同研究を通じて、アジア地域での頭脳循環の拠点「FEネットワーク・ハブ」となることを目指しています。

地球環境学堂は、実践的に地球環境・地域環境問題を解決するため、研究・教育において学際的・国際的な視点を重視しており、本プログラムを成功させるために十分な組織体制、実績、ノウハウを備えています。組織は自然科学、人文・社会科学の多分野からの教員によって構成されており、2002年の創立以来、研究・教育の国際連携「アジア・プラットフォーム」事業、国際化拠点整備事業(G30)による「国際環境マネジメントプログラム」、戦略的環境リーダー育成拠点形成事業「環境マネジメント人材育成国際拠点」プログラムを通じて、アジア地域を中心とする研究・教育の国際連携で数々の成功を収めてきました。今年度からは、研究拠点形成事業「インドシナ地域における地球環境学連携拠点の形成」に着手するなど、さらなる発展を目指しています。本プログラムでは、こうしたアジア地域を中心に培ってきた地球環境学の学際的な国際共同研究・国際連携の実績、ノウハウ、組織体制をベースとして、欧米等先進諸国に焦点を絞り国際共同研究ネットワーク(以下、FEネットワーク)の強化・拡張を目指します。ただし、実現性の観点から地球環境学堂の教員がこれまでに実施してきた多分野にわたる地球環境学の国際共同研究をコアにして実施します。これまでの国際共同研究を主導してきた教員を主担当研究者・担当研究者にし、若手研究者をそれら共同研究の相手国の研究機関に長期派遣することで研究協力関係の強化を図ります。

さらに、本プログラムを通じて構築される新規を含むFEネットワークは、担当研究者で構成する「FEハブ構築委員会(委員長:応募組織の長)」を中心に融合を図ります。本委員会が中心となり地球環境学関連の海外機関との研究・教育の交流を加速させ、地球環境学堂が国際的なFEネットワークのアジア地域におけるハブ(以下、FEネットワーク・ハブ)となることで将来の頭脳循環につなげます。

◎若手研究者の派遣と国際共同研究との関連

若手研究者は、FEネットワーク・ハブのもとで、担当研究者が主導するFEネットワークに参画し、派遣国の研究者と共に共同研究を分担実施します。FEネットワーク・ハブに参画する相手側研究機関・研究者はいずれも当該分野で世界をリードしている。若手研究者の派遣を通じて、相手国の最新の研究・技術開発の吸収を促すと共に、地球環境学堂のこれまでの実績を海外に発信します。本プログラムでは、派遣する若手研究者に、担当研究者のスーパーバイズのもとでFEネットワーク、FEハブ構築委員会の運営にも携わらせ、国際共同研究ネットワークの運営に必要な知識や技術の習得や人的ネットワークの形成を促します。本派遣プログラムを通じて、若手研究者の研究(research)と運営管理(administration)の両側面で、将来の頭脳循環にもつながる国際ネットワークのためのキャパシティ・ビルディングを図ります。

到達目標

最終到達目標は、地球環境学における(A)地球環境モニタリング、(B)環境技術開発、(C)地域開発の各分野における国際共同研究によって得られる学術的成果と人的結びつき、将来を担う世界水準の若手研究者の養成により、持続可能な10のFEネットワークを構築し、地球環境学堂がこれらFEネットワークのハブとなることであります。具体的には、計10本の国際共同研究を実施し、学術成果を得るとともに、相手側海外研究機関への若手研究者計10名の長期派遣と担当研究者の派遣などによって強固なFEネットワークを構築します。さらに、地球環境学堂内外での活動報告会をそれぞれ年1回以上開催するなどし、地球環境学研究におけるFEネットワーク・ハブとしての地球環境学堂の存在を社会に認知させます。

◎研究者の海外での研究実績に対する評価

応募組織である京都大学地球環境学大学院(通称)では、地球環境学に関する研究と教育の多様な要請に応える柔軟性のある組織として、研究面においては学際領域の融合性および流動性を確保し教育面では総合的かつ高度な能力を持つ人材養成を持続する立場から、研究組織、教育組織、および教育・研究支援組織を分立させ、研究組織として「地球環境学堂(地球環境学研究部)」、教育組織として「地球環境学舎(地球環境学教育部)」、教育・研究支援組織として「三才学林」から構成される組織体制となっている。
教員は地球環境学堂に所属するが、元部局(人間環境学研究科、経済学研究科、工学研究科、農学研究科、人文科学研究所)から原則5~10年の年限で移籍する「流動教員」と、地球環境学堂にポストがある「固有教員」とで構成される。流動分野の教員採用は元部局からの推薦に基づいて地球環境学堂教授会で決定し、その一部は公募で実施しており、また、固有分野の教員採用は原則公募で実施している。
教員公募においては、選考方針の一つに「発展途上国の環境問題に対する研究に関心を有し、さらに、現地研究者と共同研究を推進するための優れた指導能力と協調性を有する者」といった文言を明記するなどして、海外研究者との共同研究を実施する能力を有することを求めているが、これは海外での研究実績を有する応募者には有利なものとなっている。また、採用後の教育においては、主要な科目は英語で実施すること、環境マネジメント専攻必須科目であるインターン研修の指導を行うことが求められ、インターン研修では例年1/4~1/3の学生が海外機関で研修を実施していることから、マネジメント能力も含めた海外研究者との交渉能力が指導教員に要求される。海外での研究実績はその能力の証の一つとなりうるものである。
地球環境学堂では、これまでに文部科学省科学技術振興調整費「環境マネジメント人材育成国際拠点(2008~2012年度)」やグローバルCOE「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点(2008年度~2012年度)」などでハノイ拠点やフエ拠点を中心としたアジアでの共同研究を展開してきており、さらにこれを発展させて研究や教育プログラムの充実に反映させる方針であり、教員の海外での研究実績はほぼ必須化していく方向にある。

◎若手研究者の選抜方針・基準

相手側の研究機関・受入研究者には本プログラムで実施する国際共同研究への参画に快諾を得ている。本プログラムで若手研究者を相手国に派遣し、主担当研究者、担当研究者ならびに相手側研究者が実施する共同研究に参画させる。
派遣する若手研究者選抜においては、派遣を希望する若手研究者が、本国際共同研究課題を構成する3分野である、(A)地球環境モニタリング、(B)環境技術開発、(C)地域開発のいずれかの共同研究課題において、担当研究者と連携(若手教員ないしはポスドク研究員を想定)あるいは担当研究者の指導のもとで(博士後期課程大学院生を想定)、課題の一部を担うことを基本方針とする。
選考では、課題採択後速やかに、応募組織内において本派遣プログラムとその下で実施される国際共同研究課題に関する説明会を開き、派遣を希望する若手研究者を募る予定である。
派遣を希望する若手研究者については、
①今後5~10年程度を見据えた明確なキャリア・プランの作成(構想力)
と共に、以下の各項目
②派遣を希望する共同研究課題について、分担する研究内容の提案(着想力)、
③これまで実施した研究や修得した専門的知識・技術がどう共同研究に活かされるか(研究能力)、
④派遣により獲得できる新たな専門的知識・技術、人的ネットワークの展望(将来性)、
⑤共同研究や調査を行なう上で支障のないレベルの語学力と対話能力を持っているか(コミュニケー
ション能力)、
について説明する応募文書(以下、選抜書類)と関連する証明書類の提出を義務づける。

◎選抜方法

実施運営組織である「FEハブ構築委員会」とは別に、独立性を確保した「FE派遣若手選考委員会」(以下、選考委員会)を設ける。選考委員会は、主担当研究者の他にFE構築委員会委員長(応募組織の長)と主担当研究者(3名)の計5名で構成する。
選考委員会は、上記の選抜書類をもとに書類審査と面接を行ない、派遣研究者を選抜する。なお、若手研究者と一口に言っても、想定される派遣希望者は、准教授、助教、ポスドク研究員、博士課程の大学院生など多様である。選考にあたり、FEハブ構築委員会の協議により、職位や現在の立場に応じて派遣前に到達するべき水準を設定する。
また、本派遣プログラムの趣旨が「優れた若手研究者の育成」にあることを鑑み、選考委員会での選に漏れた者については、上記の①~⑤においてどのような改善が必要であるかを助言すると共に、共同研究期間内であれば派遣応募への再チャレンジを認める。
本申請にあたり、応募組織内で本国際共同研究課題のもとでの派遣希望者の事前調査をしたところ、申請時点で、3分野において
(A)地球環境モニタリング分野×4名(助教3名、博士後期課程大学院生1名)
(B)環境技術開発分野×4名(准教授1名、助教3名)
(C)地域開発分野×2名(助教1名、博士後期課程大学院生1名)
という希望者が得られた。
これら希望者については、採択後すみやかに上記の選抜書類の作成・提出を求め、FE派遣若手選考委員会のもとで選抜を進める予定である。

◎若手研究者海外派遣時の支援体制

主担当研究者が委員長を務めるFEハブ構築委員会のもとで、担当研究者が中心となり、共同研究ならびに若手研究者海外派遣の起案・計画の作成といった受入機関との事前調整、実際の共同研究活動の指揮、派遣若手研究者の研究サポート、プロジェクト終了時までの研究協力体制の維持を進める。
担当研究者はまた、FEハブ構築委員会の連絡調整・運営、担当する国際共同研究の遂行・成果管理、の全責任を担う。派遣中の若手研究者ならびに相手国の受入れ共同研究者とは、メールやインターネット電話などにより定期的にコミュニケーションを図るほか、若手研究者が派遣中には1回以上現地に赴き、研究経過報告会を実施し、研究への助言・指導を行う。
応募組織は設立以来11年間に亘り、博士前期・後期課程の大学院生に長期インターンシップを必修科目として課しており、国内外の150以上の民間企業、自治体、各種団体、研究所等への派遣・共同事業を行なってきた。長期インターンシップを実施するための派遣先機関との連携、事前・事後教育や安全管理、守秘義務の徹底といった運営・責任体制が既に確立されており、当該機関内に設置されたインターン研修委員会が運営を担当している。具体的には、派遣先機関との協定書の締結、週次の研修日誌の提出、研修報告会の実施、実施報告書の外部公表といった仕組みが整備されている。
本派遣プログラムでは、主に担当研究者で組織される「FEハブ構築委員会」がこれらのインターン研修委員会のノウハウを継承し、派遣若手研究者への円滑な研究活動のサポートが可能となる。FEハブ構築委員会に属する担当研究者にはインターン研修委員の経験者もおり、ノウハウの円滑な継承が行える。

◎期待される成果

本事業により育成される若手研究者は、アジア地域でのFE研究の推進に貢献する国際研究ネットワーク・ハブの構築およびそれに基づく将来の頭脳循環に資する人材であり、それは大学改革実行プラン(H24)の「大学の研究力強化の促進」(課題例:国際共著論文の割合の増加)あるいは「グローバル化に対応した人材育成」(課題例:教員のグローバル教育力の強化)に適う人材である。本派遣プログラムへの参画を通じて、若手研究者の研究(research)と運営管理(administration)の両側面で、将来の頭脳循環に不可欠なキャパシティ・ビルディングが促される。
具体的には、本プログラムを通じて以下の人材として活躍することが期待できる。
1) 地球環境学分野での世界的水準の国際共同研究を主体的に実施し、その成果を発信できる人材
2) 統合的・学際的研究をマネジメントできる高度なコミュニケーション力を有する人材
3) 大学のグローバル教育力の強化に資する人材

上記それぞれの具体的検証では、以下をその指標例とする。
1) 派遣研究者と海外研究者が共に共著者に含まれる国際水準の研究発表会・論文誌での発表数
2) 地球環境学分野における異分野の研究者との共同研究数・共著論文・共同発表数
3) 英語による授業の実施数、および指導学生の海外での研修・研究実施数

加えて、年1回以上開催予定の国際共同研究を内外に発信するためのフォーラムでの発表・参加者数、年1回以上開催予定の内部向け報告会・参加者数、および個別の派遣研究成果報告書をもとに、「FEハブ構築委員会」が本派遣プログラムによる成果のモニタリング、検証を行う。

◎本事業概要

頭脳循環を加速する若手研究者海外派遣プログラム

本プログラムは、国際共同研究ネットワークの核となる優れた研究者を育成し、我が国の学術の振興を図ることを目的として、標記のプログラムを実施します。このプログラムは、大学等研究機関が、研究組織の国際研究戦略に沿って、世界水準の国際共同研究に携わる若手研究者を海外へ派遣し、様々な課題に挑戦する機会を提供する取組を支援するものです。

外部リンク JSPS日本学術振興会 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム