環境学的アジア経済史論

スタッフ名、職名

籠谷 直人 教授

概要

 アジアにおける歴史的径路を考察する。なかでも19世紀は,近代のグローバリゼーションの時代として理解されている。19世紀中葉の「自由貿易原則」,「交通革命」,「国際金融網の発展」などがその動きを促した。近年にますます進められている地域経済の比較研究は,グローバル・ヒストリーの方法論を示唆している。ヨーロッパ内の比較だけではなく,西欧と東アジアといった広域地域の比較研究は進んでいる。ヨーロッパが一方的に影響を与えるのではなく,異なる地域間の交錯として,グローバリゼーションの過程が分析されている。なかでも東アジアは,ヨーロッパの植民地主義の圧力をうまくかわし,工業化をなしとげた好例である。

 19世紀は,経済的危機が地球的規模になった時代である。この国際的な危機の問題は,これまで十分に議論されてこなかった。なかでも伝染病の蔓延は19世紀世界のなかでは,固有の問題である。海岸線にそって,港をつたって病気がひろがる。人口の増加にあわせて,衛生環境の改善がともなわない地域では,病気がいとも簡単にひろ
がった。その結果として,交易に制約が加わり,不況の要因ともなった。東アジアの工業化は,こうした経済的危機の文脈のなかで検討される必要がある。経済の問題は,こうした地理学的,生物学的,環境学的な問題と深く結びついている。しかしながら,この問題を解明することは容易ではない。歴史学と科学の交錯が必要である。

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