第31回嶋臺塾を開催しました

第31回 住みこなす

s31_soto日  時: 平成27年1月20日(火)午後6時~8時
学堂から:「草原と住まうーモンゴル・遊牧の民の現在」
      西前 出(地球環境学堂 准教授)
洛中から:「町と住まうー京都・堀川団地の今昔」
      大島 祥子 氏(町づくりコーディネータ)
ひとこと: 安枝 英俊 氏(兵庫県立大学 環境人間学部 准教授)
司  会: 小林 広英(地球環境学堂 准教授)
協  力: 嶋臺(しまだい)

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第31回の嶋臺塾は、「住みこなす」と題して、学堂の西前出さんと、町づくりコーディネータの大島祥子さんにお話しいただきました。

学堂からは西前さんに、モンゴルの住まい方についてお話しいただきました。日本の4倍の面積に京都府ぐらいの人口が住まうモンゴルですが、現在、その3分の1以上がウランバートルに集中しているのだそうです。モンゴルは、国土のおよそ8割が草原で、平均気温が0度を上回るのは5~9月のみで、自然の回復力がたいへん弱い地域です。それでも、モンゴルの人々は、遊牧をいう方法で草原とうまく暮らしてきました。1992年の民主化以降、モンゴルの試行錯誤が始まっています。それまで草原とのバランスで決まっていた家畜の種類が、カシミヤがとれて儲かるからという理由で草原への負荷が高い山羊に傾斜しつつあります。ウランバートルに定住する人も増え、周辺地域の過放牧問題、環境汚染、違法開発などの都市問題も増えています。遊牧に対する誇りと子供を大学にやりたい親としての気持ちの間を逡巡が、モンゴルの人々にも政府にもあるのだそうです。西前先生からは、そうしたモンゴルの現在を、美しいモンゴルの景色や暮らしぶりの写真を交えながら、軽妙な語り口でご紹介いただきました。

洛中からは、町づくりにかかわっておられるスーク創生事務所の大島祥子さんに、京都の堀川団地についてお話しいただきました。堀川団地は、京都市街の堀川通り沿いにある、商店街を一階に置く、いわゆる「下駄履き住宅」です。公営住宅の「標準設計」が普及する以前の、1950年代の建物で、鉄骨づくりということもあり、風貌こそ違うのですが、空間の配置や内装や風通しへのこだわりなどは、京町家のそれを色濃くひきつぐものなのだそうです。

堀川団地には、戦前そこにあった堀川京極の伝統が残り、そこに住む人も、内装を変えたり実家の住宅との使い分けをしながら、うまく「住みこなし」てこられたそうです。とはいえ、堀川団地も還暦を迎え、建物の老朽化は否めません。しかし、ここでも、安易に建てかえを行うのではなく、現在、再生が目指されています。そのような堀川団地に、現在若い人らが住みはじめました。彼らは、DIYで大胆な内装の変更などを行いながら、町に溶け込む暮らし方を志向しているのだそうです。
大島さんからは、こうした堀川団地のこれまでとこれから、京の町での暮らし方、京の町とのつきあい方についてお話しいただきました。

最後に、兵庫県立大学の安枝英俊さんからは、生活に合わせて環境を変える住まいづくりではなく、環境に合わせて生活を変える知恵という点で、モンゴルも堀川団地も学ぶことができたとの感想をいただきました。

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