シンポジウム「土壌はアフリカを養えるのか」を開催しました

 国際土壌年である今年2015年に、土壌肥料学が世界の食料・環境問題に対してどのような貢献をしてきたか、今後どう貢献するべきかについて、アフリカを題材として考えるシンポジウムを開催しました。アフリカ研究を行ってきた土壌肥料学分野の研究者を中心に、水資源や地域開発などを含め幅広い分野の研究者を招き、アフリカの現在と未来について様々な視点から考察し議論しました。本シンポジウムは一般の方々も対象とした公開シンポジウムとして日本土壌肥料学会2015年度京都大会の開催に併せて9月11日(金)午後に益川ホールにて開催し、同大会運営委員会が主催し、総合地球環境学研究所、地球環境学堂および科学研究費基盤研究(S)「熱帯アジア・アフリカにおける生産生態資源管理モデルによる気候変動適応型農業の創出」が共催しました。

<プログラム>
○第1部
「アフリカの土壌はアジアとは異なるのか?」舟川晋也(京都大学)「アフリカにおける農業の位置づけ-生業としての農業」島田周平(東京外国語大学)
「アフリカの水資源と食料生産・貿易-2050年までの将来シナリオ-」佐藤正弘(内閣府経済社会総合研究所)

○第2部
「アフリカにおける作物生産の特色-サバンナ開発との関連で」伊藤治(元国連大学)
「アフリカにおける地域開発支援に関する技術論の課題と展望-人々の暮らしと土壌や生態環境との関わりをめぐって」田中樹(総合地球環境学研究所)
「アフリカ水田農法の展開による緑の革命の実現」若月利之(島根大学名誉教授)

○総合討論
コメンテーター・荒木茂(京都大学)、同・真常仁志(京都大学)
座長・舟川晋也(京都大学)、同・矢内純太(京都府立大学)

 講演では、アフリカの土壌の性質、分布および養分動態(舟川)、水資源の地理的需給不均衡の増大とそれを解消する手段としてのバーチャル・ウォーター貿易の役割(佐藤)、広大なサバンナの農業開発における作付体系・様式(伊藤)、西アフリカ半乾燥地および東アフリカ山間部の地域開発支援の事例(田中)、アフリカ水田農法の展開と生産ポテンシャル(若月)の話に加え、農村の多生業化が進む中で農業生産を一生業として国民経済全体の中で捉えることの重要性(島田)といった農村調査からの経験なども含め、様々な視点からアフリカの現状と課題が論じられました。総合討論ではコメンテーターからの論点の提示と問題提起を受けて活発な討論が行われました。本シンポジウムは会場の定員を上回る171名の方々が参加され、来場者からの質問と意見も多数寄せられるなど、盛況のうちに終了しました。日本土壌肥料学会員以外の参加者も参加者全体の4割、そのうち一般市民の参加者が1割を占め、また、テレビ放送局による取材撮影と報道(民放1社)もされるなど、本シンポジウムの主題に対する社会の関心の高さをうかがわせました。

土壌1

土壌2

土壌3