研究室紹介

地球親和技術学郎   

生物多様性保全論分野の紹介

―どんなことを研究されているのですか?

瀬戸口・阪口の専門は植物の系統分類学や系統地理学を基盤とした進化多様性に関する研究です。以前は1年の3分の1は海外に調査に出ている時期もありましたが、最近では国内を中心に研究しています。日本の国内の中にも、南北に長く、亜寒帯から亜熱帯まであり、環境の様々な違いがあります。そういった、日本列島の特徴の中に独自の面白い現象を見つけて、植物がどうやってそれに、環境に適応して進化し、環境に適応して生きているかというところを探っていきたいと思っています。西川は動物で上記とほぼ同じテーマに取り組んでいます。調査フィールドは日本を含む東アジアと東南アジアが中心になります。

 結果的に、その多くの割合の植物や動物たちが様々な多様性に富んでいますが、研究で出てきた植物と動物一つ一つを保全、採取、増殖と、やっているうちに、いつの間にか片足半分、完全に保全にどっぷりとつかっていました。

―どのような特徴をもった研究室ですか?

学堂に行くときに、自分たちの個性はなんだろうと考えたときに、biological diversity、多様性進化学、多様性保全学をやっているということで、キーワードは多様性となりました。

 また、教養科目を担当する関係で、個々の先生ができるだけ幅広い分野を網羅するようにしています。他の学部みたいに一つで講座を作ると同じ分野になってしまうので。研究の志向は同じ方向を向いていますが、ここの生物多様性の教室の場合は、先生も多様であるということが一つの特徴かと思います。

 

―院生の皆さんがされている研究について教えてください。

どちらかというと保全よりも進化に関心を持っている学生が多くいます。ただ、最初に進化のことに一番関心を持って研究をやっていますが、結果的に行事に参加したり、部屋にいることで保全を知り、地元の人たちとの関わりというのを見て、そんな中で、将来、進化学とか多様性科学をやりつつも、ある程度、やっているうちに、どうしても保全に関わってくることになっちゃうので、そのときに、そういったことに関わる人になってくれればいいなとは思っています。

 

―研究室を卒業した学生は、どういった方面で活躍させていますか?

ドクターまでいった人だと、大学が多いです。コンサルに就職した人や、研究の経験を生かして事業化した人もいます。院生にも会社を興したいという人がいるので、もう少しそういう研究の経験をして、社会の中で活躍する人が増えるといいなと思います。

今後、保全とかいろいろ考えると行政との関わりが重要で、特に文化的側面でのつながりを深めたいと考えています。卒業生が研究を経験して教員、役所にいったり、普通のビジネスにいったりとか、もう少し様々なところにいってもらいたいと思っています。結局そのほうが、生物多様性の保全とかいろいろ考えても早いと思うので。いろんな意味でフレキシブルに。それを目指したいなと思います。

            (インタビュー:深町加津枝)

 

地球益学廊

持続的農村開発論分野の紹介

―どんな研究室ですか?

 もとは農学部の農地計画学研究室として発足しました。その後、農村計画学研究室に名称変更され、2011年から持続的農村開発論研究室として地球環境学堂に参画しています。農村計画学会という学会がありますが、創設当初からこの分野をずっと担ってきました。農村計画学は端的に言うと農村地域における課題解決学です。基本的には地域の課題解決からスタートし、様々なコンセプトや理論、手法を駆使して、具体的な計画や提言を生み出していきます。計画路論や計画手法、計画制度などを作っていきますが、自分たちだけで全てを完結させるのではなく、課題解決に役立ちそうなものは何でも貪欲に使ってみるというプラグマティックな考え方を採用しています。フィールド(現場)には、課題だけでなく、解決方法のヒントも眠っています。当然、フィールドから学ぶことを非常に重視しています。

 研究室では日本のことだけではなく、海外の様々な課題にもとりくんでいます。具体的な解決策を出していこうと努力をするのですが、努力をすればするほど、あるいはその地域にかなった提言をしようと思えば思うほど、そこの地域の固有性があり、制度も国ごとに大きく変わっていきます。農村計画学は学際性という点では早くから取り組んできましたが、日本の農村課題を中心に研究してきたので、国際性は逆にかなり遅れていました。われわれの研究室は国際性という点でアドバンテージがあると思っています。

―どんなことを研究されているのですか?

 フィールドは関西近辺を中心にしていますが様々です。取り組んでいる課題は、例えば、コミュニティ計画の方法論の開発や地域組織の再編などに関する研究です。定期的に地域に入って、計画策定のお手伝いをしたり、制度的な提案なども継続して行っています。それぞれのテーマごとにいろいろな地域を選択しており、神戸市の集落計画づくり、美山町でのツーリズム、亀岡の農村地域の情報化などにも取り組んでいます。今後は、農村計画にかかわる地域モデルの開発、ワークショップに関する基礎的研究などを重点的に取り組みたいと思っています。

 

―研究室はどのように運営されていますか?

 全体で29名のメンバーです。教授1名、准教授1名。助教1名、研究員は3名で出身はインドネシア、バングラデシュ、日本です。修士課程の学生が13名です。バングラデシュとインドネシア、中国、台湾、韓国出身の学生も含まれます。海外からの学生が多くいるため研究テーマはほんとうに多様です。

―研究員と学生がされている研究は?

 研究員は地域の将来を予測するモデルについて、マルシェ、農福連携、防災関係の研究を、学生は、都会の地域における地域社会の防災レジリエンスの向上、多文化共生に配慮したインバウンド観光開発のあり方、3Dモデルを用いたワークショップなどです。特に現在、情報化が急ピッチで進んでおり、例えばスマート農業とか、海外ではスマートビレッジと言いますが、農村にICTのテクノロジーなどが急速に普及しつつあります。これを一つのチャンスと捉え、農村が抱えている様々な過疎化や様々な担い手不足のような部分も含めながら、課題解決を目指しています。

            (インタビュー:深町加津枝)