第40回嶋臺塾を開催しました

第40回 京都(みやこ)の井戸

日  時: 平成30年3月27日(火)午後6時~8時
京大から:「足元の水の流れ」
      乾 徹 氏(京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
洛中から:「京の名水と暮らし」
      鈴木 康久 氏(カッパ研究会 世話人)
司  会: 吉野 章(京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
協  力: 嶋  臺 (しまだい)

今回は,京都の井戸をテーマに,地球環境学堂からは土木工学の乾徹准教授に,洛中からはカッパ研究会の鈴木さんにお話しいただきました。

乾さんからは,京都の足下を流れる水について解説してもらいました。京都盆地には,琵琶湖の水の7~8割ぐらいの水があって,それは均一に分布しているのではなく,基盤岩とその上に堆積している粘土や砂の層のあり様でだいぶ違うのだそうです。北の方の基盤は100~200メールぐらいの深さだそうですが,南の方は比叡山の高さと同じくらいの深さだそうです。そうした地形で京都の地下水の量も味も変わるし,逆に,地下水の動きで地盤沈下が起きるなど土地の姿も変わります。微妙なバランスで成り立っている京都の地下水ですから,それを守り利用する知恵を大事にしたいというお話でした。

また,鈴木さんからは,京都の名水についてお話をいただきました。鈴木さんは,もともと京都府の職員さんでしたが,とにかく京都の井戸がお好きで,当時から多くの水にまつわる著書をものされてきました。「井は  ほりかねの井 玉の井 はしり井は逢坂なるがをかしきなり」と『枕草子』にあるように,京都には平安の頃から名水と呼ばれる井戸がありました。名水が名水であるのは,必ずしも水質がよいというだけではなく,名所(などころ)であるとか,歌枕に使われるとか,由来であるとか,時代が下れば,茶の湯や染め物に使われたとか,あるいは薬効など,様々です。京都は昔から,水を特別のものとして扱ってきました。その価値観は,貨幣価値とか労働価値とは違い,宗教や道徳・倫理とも違う独特のものです。そうした京都の水との付き合い方,水に対する価値観を再確認して,次世代に受け継ぐ必要性を訴えられました。

会場の方も,京都の水にはたいへんな関心があるようで,質問や意見が途絶えず,2時間という長さがとても短く感じた今回の嶋臺塾でした。