地球環境学堂は、ワイルド&ワイズ共学教育受入れプログラム事業として「国際オータムスクール2019 ~環境学分野~」を実施しました。
本短期留学プログラムは、「スーパーグローバル大学創成支援事業 京都大学ジャパンゲートウェイ」の環境学分野において、世界各国で先端的な環境学の研究を実施している提携・関係大学と国際共同教育を実施する事業の一環として行われました。アジア、アフリカ、欧米、オセアニアより学生12名(修士・博士課程)が京都に集い、在学中の京大生19名(部分参加含む)とともに、日本の環境について講義やフィールド視察を通して理解を深め、環境学の手法を学びました。
今年で5回目となる本プログラムは、『環境問題の根底にある文化』をテーマに、森林資源、ゴミ処理、水処理、農業、自然災害、大気環境について、各国の現況を共有することからはじまりました。その後、各テーマに関連する日本の現状と対策についての講義シリーズの受講、フィールド視察、施設訪問、フィールド講義などを通して、日本特有のアドバンテージ、各課題の背景、経緯、対処、課題、解決策について、京都や関西の事例を中心に知見を深め、継続的なグループディスカッションを実施しました。
大気環境については、フランス・リール大学から講師を招聘し、地球環境学堂の教員らと共に大気環境化学セミナーを開催しました。セミナーでは、大気環境のモニタリング手法などを学ぶとともに、各国の大気汚染の法規制、対策についての議論を実施しました。
参加者間のディスカッションでは、日本の排水処理技術や、問題対処に関する法整備や条例の施行および政府機関の役割、自然災害に対するソフト面での準備と対処、公共交通の発達、研究および環境物質のモニタリングについての先端性、優位性が称賛され、各国への技術移転への障壁(経済、政治、各地の文化と利用に合う技術としての調整・変更)や実現可能性、海外機関との連携の重要性などについて議論がなされました。一方で、日本や京都の生活については、洗練された文化に基づく環境配慮型の街・生活・風土がある一方、過剰包装や使い捨て商品の大量消費・大量破棄が多く見られ、消費者意識の低さ(マイボトル、使い捨て製品使用レストランの利用とりやめ等の選択)、販売・製造者側の環境配慮に関する意識の低さを指摘する声もありました。
参加者らは11月26日から開催された『京都大学国際シンポジウム-アジアにおける地球環境学の教育と研究-』にも全員出席・研究発表を行い、本プログラムから参加した学生2名が若手研究者に贈られる優秀ポスター発表賞を受賞しました。
最終日には、本プログラムで得た視点や手法も交えながら、各国の状況と今後を見据えた課題や解決へのアプローチについて、個人、地域、グローバルのそれぞれの視点からできること、ボトルネックについての発表を行い、質疑応答では、より現実的なアプローチについて参加者から、工学、社会学、政治(内政、国際)など幅広い分野から、多角的な白熱した議論が展開されました。
選抜された優秀な参加者たちの積極的な参加姿勢と、地球環境学堂の教員およびスタッフによる運営支援のもと、プログラムは円滑に実施されました。本プログラムは、参加者全員にとって有意義な議論、貴重な経験、学びの場となりました。このような国際共同教育研究の積み重ねが、さらなる環境学の発展と、近い将来の環境により配慮した持続的な社会の構築に繋がっていくことを期待しています。
オータムスクール講義シリーズ受講の様子
和歌山におけるフィールド講義(防災)の様子
滋賀におけるフィールド視察(雨水処理技術)の様子
国際シンポジウムでのポスター発表の様子
大気環境化学セミナーの様子