瀬戸内海研究会議 京都大学大学院地球環境学堂主催「平成29年度 瀬戸内海研究フォーラムin京都 ~川と海のつながりが育む豊かな文化と生態系~」を開催しました。(2017年9月6−7日)

本フォーラムは、瀬戸内海環境保全知事・市長会議、京都大学生態学研究センター、京都大学フィールド科学教育研究センター、総合地球環境学研究所の共催、瀬戸内海環境保全協会、京都大学森里海連環学ユニットの協賛、環境省、京都府、京都市、琵琶湖・淀川水質保全機構の後援のもと、京都大学百周研時計台記念館2階、国際交流ホールⅡ・Ⅲで開催され、関係者を含め179名の方々が参加し、盛大に行われました。学堂からは、本フォーラムの運営委員長として藤井滋穂教授、委員として山下洋教授、原田英典助教、岡本侑樹特定助教が運営に加わりました。

9月6日の第1セッションでは、「都市を支える景観:瀬戸内海国立公園から学ぶ」をテーマに、社会学的な見地から、さまざまな地方(じかた)の暮らしについて、京都、徳島、丹波を事例に、それぞれのスケール、それぞれの資源(人、モノ、景観、暮らし)を生かした取り組み、現況について紹介され、観光への取り組みや住民の認識、地域の民話の活用と再生、国定公園指定を受けての今後の取り組みなど、他の地域との比較や外国人観光客の誘致も含めた今後の方策や、暮らしの在り方について活発な意見交換が行われました。

また、ポスター発表セッションでは、「環境保全・創造に関する研究・活動報告」をテーマに、26題の発表がありました。発表された内容は、瀬戸内海・琵琶湖流域における水質構造や栄養塩動態、マイクロプラスチック、難分解性有機物の研究にはじまり、地域活性化のためのローカルな取り組みの紹介や、植物プランクトン種組成と分布、ドローンを用いた特定種の生息域に関する研究、下水処理における分解特性の研究など、化学、社会学、生物学、工学と多岐にわたる発表が行われ、活発な研究討議が各パネルで実施されました。学堂、学舎からも研究発表があり、「大阪湾における微細藻類休眠期細胞の種組成と分布」について発表された石井健一郎特定研究員(学堂)が優秀ポスター賞を受賞しました。

また、同日には、懇親会も開催され、多様な研究者や行政関係者が集う中、有意義な情報交換の場となりました。

9月7日には、第2セッション「生物生産からみた流域と沿岸域の相互関係」および第3セッション「豊かな生態系の琵琶湖との共生を探る」において、理化学的な研究を中心とした講演と活発な議論が行われました。

「生物生産からみた流域と沿岸域の相互関係」のセッションでは、瀬戸内海を中心に、若狭湾など他の事例も踏まえて、海底湧水の流入がもたらす水産物への効果や、森林から沿岸域への窒素供給、土地利用と溶存鉄の供給の関係、水産物におけるプランクトンなどの1次生産者の重要性や、栄養段階の違いから生じる、水産物の栄養の転送効率に関する活発な議論がなされました。

「豊かな生態系の琵琶湖との共生を探る」のセッションでは、琵琶湖が抱える諸課題の変遷と現況について紹介した後、琵琶湖における一次生産者とは異なる、微生物を介した食物連鎖(細菌から原生生物)の発見と重要性について、最新の知見を提供するとともに、水草の有効利用に向けた新たなバイオガス利用の取り組みと里湖再生について発表され、瀬戸内海にも共通する課題や、研究や諸政策のアプローチの違いなど、多面的な議論が展開されました。

最後に、本フォーラムの総括、ポスター発表賞の授賞式、次年度のフォーラムの紹介なども行われ、2日間に渡るフォーラムの全日程が終了しました。

本フォーラムは、瀬戸内海研究会議ならびに京都大学大学院地球環境学堂の主催でありましたが、琵琶湖や流域圏も踏まえた地域間の比較と、社会学など多分野の学問の視点を交えて瀬戸内海を見つめ直し、考えるフォーラムとして、活発な議論や意見交換がなされ、大変有意義であったと多くの参加者からの声が聞かれました。今後も、瀬戸内海やその流域における多分野の研究の進展と、地域の発展につながる舞台として本フォーラムが機能していくことが期待されます。


開会の挨拶


ポスター発表の様子


第1セッションの様子


第2セッションの様子


第3セッションの様子


集合写真


懇親会の様子


運営に加わる学堂教員らの様子


優秀ポスター賞を受賞した石井健一郎特定研究員