第20回(2014年10月18日開催)地球環境フォーラムの質問に対する回答

2014年10月18日に開催しました第20回地球環境フォーラムでは多数のご質問・コメントをいただき、誠にありがとうございました。 いずれも興味深いものばかりで、すべてのご質問・コメントにお応えしたいところですが、一部だけの回答とさせて頂きます。大変申し訳ございませんが、何卒ご了承ください。

質問1(全員に対しての質問) 技術開発と産業化,商品開発(農薬など)(自動車と燃料)(電力と原子力)について、いかにすれば負の部分を最小限にできるか、各専門の視点から提示して頂ければ幸いです。

回答
岡田先生:
技術革新によって負の部分を抑えることには限界がありますから、現在の大量消費文化を変えることだと思います。もっと端的に言えば、資源を大量に消費している国、人々がもう少し貧しさを受け入れることでしょう。

藤原先生:
政府が、大学や企業研究の予算を、人間や自然に短期的および長期的に負荷を与える研究ではなく、再生可能な資源やエネルギーや修理改修や大量消費社会の克服の研究のために使うように誘導することがさしあたり考えられます。さらに、解体・修理・再利用専門の研究所を作り、そのセンターの技術でさえ解体できない商品には生産制限をかけるべきです。

多田先生:
これら科学技術による生産については、環境リスク、すなわち生態リスクや健康リスクのより低減されたものやエネルギーへの転換過程にあります。企業や行政、法律による取り組みだけでなく、市民の消費行動などライフスタイルの転換も必要であると考えられます。現在のようなリスク社会においては、さまざまなリスクをいかに低減するかが問われています。

質問2(全員に対しての質問) オーストラリアのタスマニアは成長ホルモンを食品向け動植物に使用を禁じている。日本は輸入にもう少しキビシイ取り組みが必要と思いますが、いかがですか?

回答
岡田先生:
輸入品に対する農薬などの規制は厳しくてもよいと思います。

藤原先生:
日本は化学物質について、もっと厳しい規制が必要だと思いますし、そのための教育活動および討論活動がもっと熱心になされるべきです。いくら正しい規制でも、人々にちゃんと伝わらなければなりません。

多田先生:
輸入される新規化学物質については、1973年制定の化学物質審査規制法(化審法)により管理しています。今後もさらなる規制・管理が必要とされます。

質問3(岡田先生への質問) 先生のお考えになられる最優先で抑えなければならない資源とはなんですか?またその理由をお聞かせ下さい。

回答
エコロジカルフットプリントの観点からいうと、日本に関しては二酸化炭素排出に最も関係する資源の消費を抑えるということになります。このことはしかし単に化石エネルギーの消費を抑えれば良いと言うことにはなりません。エネルギーを使って行う経済活動全般を抑制するということになりますから、私たちが現在の消費水準を落とす事であり、必要のない消費を控えるということでしょう。世界的な規模で考えると、資源の公正かつ適正な分配だと思います。平たく言えば、貧富の差を縮めることです。

質問4(多田先生宛の質問) 健康に影響のある化学物質の連鎖蓄積による水産物の規制についての情報発信は、どのようにされていますか?

回答
水銀のマグロなど魚類への蓄積について、すでに健康影響のかかわりからその対応が報告されています。その他の有機塩素化合物など蓄積性の高い化学物質については、発がん性の健康リスクから、IARC(国際がん研究機関)によりヒトに対する発がん性と動物実験の結果からグループ分けされています。それらの化学物質の一部は、化学物質審査規制法の対象物質になって公開されています。

質問5(多田先生宛の質問) 遺伝子組み換えによる鮭の輸入に関わる食の安全では、問題は起こらないですか?

回答
この件に関しては、当方の研究所において関与していないためお答えすることはできません。