第33回嶋臺塾を開催しました

 第33回 何処に御座る

日  時: 平成27年7月27日(月)午後6時~8時
挨  拶: 舟川晋也 (地球環境学堂 副学堂長)
洛中から:「京に畳を敷き繕う」
      磯垣 昇 氏(畳師)
学堂から:「藺草産地の経営史」
      吉野 章 (地球環境学堂 准教授)
主  催: 京都大学大学院地球環境学堂
協  力: 嶋 臺(しまだい)

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日本の家と言えば「畳」。しかし、現在、畳部屋の無い家が増えてきています。畳の需要は、平成の間に3割程度にまで減ってしまいました。しかも、その減少に歯止めはかかっていません。このまま日本の住宅から畳は消え去るのでしょうか。

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今回は、畳師の磯垣昇さんにごご登壇いただき、畳の歴史、畳屋さんの技術、そして良い畳と悪い畳の違いなどについてお話いただきました。
現存する最古の畳は、正倉院にあるそうですが、その紹介から始まり、江戸時代の普及の様子、明治から始まる機械化の歴史と畳の変容についてご紹介ただきました。
現在の畳の土台には、発泡スチロールが入っています。それは、ワラの確保の問題だけでなく、調湿性のない現代家屋のつくりも関係していること、そして、ワラ床が使われなくなったことで、畳屋さんから、かつての技術がなくなってきているからとのこと。本当に高級な畳というのがどういうものかも教えてもらいました。それは床、裏付き、保持材などががしっかりしている、見えないところにお金がかかっている畳なのだそうです。文化財ですら発泡スチロールが使われたりする中、磯垣さんは、それをつくる技術の伝承にも力を入れられているとのことです。

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学堂からは、吉野章が畳表の原料となる藺草の話をしました。
藺草の産地と言えば、かつては備後表で有名な広島県、そして岡山県でした。それが、高度経済成長期に熊本県に移動し、藺草の一大産地が形成されます。藺草というのは、冬の厳寒期に植え付け、夏の一番暑い時期に収穫します。その作業は過酷で、泥染めと乾燥を行うので泥まみれです。広島・岡山の藺草農家が工場に吸収されていく中で、新興産地・熊本は、機械化と規模拡大を繰り返します。
しかし、平成に入ると、中国からの藺草や畳表の輸入が急増します。さらに畳の需要が減少することで、熊本でも藺草を生産する農家は激減していきました。
今回は、こうした藺草産地の移動や藺草農家の格闘の様子をたどりながら、戦後日本農業がたどってきた道のりや、私たちの畳に対する見方への影響についてお話ししました。

会場との質疑では、磯垣さんにお持ちいただいた七島藺、高級品の備後表、有職畳など、めずらしいものを見せてもらいながら、京都の文化財やお寺での畳事情、泥染めをする理由、京間と関東間の違い、畳の硬さ、畳業界など、さまざまな話題が出ました。磯垣さんには、どの質問にも一生懸命答えていただき、最後に「どうぞ畳をよろしくお願いします」とおっしゃいました。畳のよさを知り、畳の変容を見てこられてた磯垣さんの畳に対する思いを感じた今回の嶋臺塾でした。(吉野 章)