過疎化や高齢化が続くなかで、地域環境の維持・管理が困難となる農村集落が増加しており、その対策は喫緊の課題となっています。地域内部の様々な機能が低下するなかで求められているのが、外部とのつながり(社会ネットワーク)に対するアプローチです。人と人とのつながりはソーシャル・キャピタルの主要要素でもあり、つながりを定量的に分析する社会ネットワーク理論も発展を続けています。また、農村地域に関する政策でも、つながりにアプローチするものが数多くみられます。第31回目となる地球環境フォーラムでは、農村地域のつながりに焦点を当てて、農村計画学、社会学、社会心理学と異なる分野から3名の演者による報告があり、パネルディスカッションが行われました。
鬼塚助教は、農村地域が直面する重大な問題点と農村開発論の変遷について社会ネットワークの視点から説明しました。新しいアプローチである多様な主体との協働を通じたイノベーションを目標とするアプローチやICTの役割等について幅広く情報提供が行われました。金光准教授は、農村地域を活性化させる新しい方法として、芸術祭の現状と可能性を紹介しました。さらに創造農村の概念について説明が行われ、どのようにすればそれが実現できるのかについて様々な示唆が与えられました。内田准教授は、社会心理学の観点から、農村地域のつながりと幸福度の関係に着目した様々な研究結果を紹介し、農村地域のつながりの重要性を多角的に説明しました。
パネルディスカッションでは、3人の講演者がそれぞれ異なる研究背景を持っていたにも関わらず、農村地域の持続性に向けた新しい方法論に向けて活発な議論が行われました。本フォーラムを通じて、社会ネットワークに焦点を当てた議論では個人のモチベーションや幸福度等に関する視野が不足しており、双方の視点を考慮する重要性が確認されました。