第27回 鮎香る川
日 時 : 平成25年7月30日(火)午後6時~8時
場 所 : 嶋臺本陣ギャラリー
嵐山から :「京料理と鮎」 栗栖 基 氏 ( 熊彦主人 )
学堂から:「石垢と鮎」 宮下 英明 (地球環境学堂 教授)
洛中からひと言、ふた言 ...
司 会 : 深町 加津枝 (地球環境学堂 准教授)
主 催 : 京都大学 地球環境学堂・学舎・三才学林
協 力 : 嶋 臺(しまだい)
夏の京料理には欠かせない鮎。その鮎の棲む川が減ってきています。そのこと
は、私たち日本人に何を教えているのでしょうか。今回は、京料理界から嵐山
の熊彦のご主人・栗栖さんと、学堂の宮下教授にお願いして、鮎について語っ
てもらいました。
栗栖さんからは、京料理の歴史から食材としての鮎の特徴、食べ方についてお
話いただきました。四里四方の食材を大切にする京料理において、川魚は切り
離すことができない食材で、その中でも鮎は夏の川魚の代表です。初夏の稚鮎
の天ぷら、小鮎の時期の背ごし、成魚の塩焼き、そして秋口の落ち鮎の煮つけ
といった、年魚である鮎の成長に沿った食べ方や、「うるか」のおいしさ、友
釣りで釣り上げた鮎の扱い方等々、料理人ならではのお話を、美しいお料理の
写真とともに聞かせていただきました。そのことを通して、私たちがいかに鮎
という食材を愛してきたか、日本人と鮎との関わりについて知ることができま
した。
宮下さんからは、鮎を育む川とはどのような川かについてお話しいただきまし
た。宮下先生は、藻類の研究者で「鮎は専門ではない」と言いながら、鮎が餌
を食べる映像なども交えて、鮎の生態についてわかりやすく教えていいただき
ました。鮎の餌は、タンパク質が豊富で消化しやすい藍藻、ビロウドランソウ
なのだそうです。この藍藻は、渕や平瀬、早瀬など、地形が複雑で岩が転がっ
た、きれいな水が速く流れる、そういう川で育ちます。護岸が整備され流れの
安定した川では、ガラス質で栄養価の乏しい珪藻や、消化できない緑藻しか育
たないそうで、そうした川に鮎は棲むことはできません。
京料理という完成された食文化も、食材を育てる川あってのことで、その川は、
生きものそのもの、水質や流量だけ維持しても意味がない、ましてや川を「水
を流す道具」程度にしか考えられないようではいけないことを、改めて知らさ
れた今回の嶋臺塾でした。(吉野 章)